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私には、葬儀について、忘れられない記憶がある。
中学生の頃。夏野の曾祖母が亡くなったときの、火葬場での記憶だ。
火葬を終え、曾祖母の遺骨を見た伯母が、ショックだったのだろう、ふらりと倒れそうになってしまった。
私が、あっ! と思った瞬間、隣にいた伯父ががっしりと腰に腕を回して伯母を支えた。
普段、明るく子煩悩で向日葵のような伯母の弱弱しい姿と、普段温和でおとなしいくまさんのような伯父の力強く頼りになる背中。ふたりで悲しみを乗り越える夫婦の後ろ姿は、私の心に深く深く刻まれていた。
でも、あのときおばちゃんを支えたおじちゃんは亡くなってしまったんだ。
曾祖母の葬儀でさえ、あんなふうにショックを隠せなかった伯母のことがとても心配になる。
私が帰るとき、伯母は
「来てくれてありがとう」
と、赤い目をして、でも優しい口調で声をかけ見送ってくれた。
伯母の悲しみやこれからの未来への心細さは計り知れない。
帰宅する車内で、今度は伯母の気持ちを思い涙が止まらなかった。
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