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挑戦する心
近くの岩場に腰かけて
昼食にしようと
リュックを降ろす
中学時代から愛用している
リュックの背面に
長年の汗で滲んだ
『西 石英』という
端正な じいちゃんの文字が
微笑んでいる
黙々と僕を愛し
育ててくれた祖父
砕け散った薔薇の花びらが語る
パンドラの箱 永久凍土
地球上にある永久凍土には
数十億トンに上る
温室効果ガスが内包されている
もし溶解すれば それらは
大気中に放出され 同時に
長年 氷に閉じ込められていた
病原菌なども 解き放たれる
つまり 未知のパンデミックの種を
永久凍土は 隠し持っているのだ
僕の心は決まっていた
今はまだ ハンドラの箱を
決して 開いてはならない
その夏 永久凍土研究調査班の
リーダーを務める 僕の心は
快晴だった
いつか 遠い未来に
必ず蘇る 父が眠る
永久凍土という名の宇宙船を
僕が 生きている間に
完璧な宇宙船に仕上げてみせる
完
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