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体は冷え切ってもう限界寸前だった。
とにかく、少しずつ体をその島影に近づける事だけを考えた。
波が寄せるリズムに合わせて、震える手足で体を浮かせる。
先ほどまで障害となっていた波に乗って、少しずつ無人島に近づいていった。
そしてようやく、歩ける程度の浅瀬まで到達した。
まっすぐに進めない体を振り絞って、砂浜にあがる。
波の届かない乾いた砂地を足の裏に感じると、そのままうつ伏せに倒れこんだ。
俺はがむしゃらに呼吸した。
何も考えず、ひたすらに、ただ呼吸を続けた。
波の音と、風に煽られた草の擦れる音、それだけを聞きながら。
しばらくして理性も落ち着きを取り戻すと、仰向けに裏返ってみる。
雲が晴れて、夜空には月が出ていた。
満月でも半月でもない、中途半端な月だった。
それから俺はわざわざここまで来た目的に向かって、同じように声をかけた。
「なにやってんだよ、こんなところで」
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