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ある日のニュース
――合理的に考えて、日本の廃棄が決まりました。
そのニュースを、僕は赤味噌の味噌汁をすすりながら聞いた。最終判断は国防連合が行い、廃棄は24時間後、廃棄方法は一酸化炭素爆弾によるものと続いた。そのニュースは淡々と読み上げられ、アナウンサーは何事もなかったかのように次のニュースを伝えていく。
「どういうことだ」と僕は言った。
「どういうことなのかしら」とさおりは言った。
「日本を廃棄するって、この国を終わらせる気か」
「言葉のとおり、そういうことなのかもね」とさおりは応じる。
彼女を真っすぐに見つめた。陶器に盛られたつややかなごはんは、ゆらゆらと湯気を立てている。
「これもすべて、ネクロイド社のしわざだろ。国防連合が判断したんじゃない。ネクロイド社の人工知能に判断させられたんだ」
「そうね、そうかもしれないわね」
僕はため息をついた。
「そうやって君は賛同するけれど、ほんとうはこの考えに反対なんだろ」
彼女は下唇をかんだ後、「そうねえ。合理的に考えてみると、あなたの考えは推論の域を出ないかもしれないわ」と言った。
最も嫌いな言葉、それは言うまでもなく「合理的」であった。箸をテーブルに叩きつけた僕は、朝食を終えぬまま家を後にした。
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