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この部屋の中央には、上から見ると正方形になるように四つのドアが並んでいる。
『MENU』
『NOTICE』
『BOOKSHELF』
『LOOK FOR』
それぞれ看板には流れるような筆記体でそう書かれていた。
「あ、今日もついてる!」
その日エリタが嬉しそうに駆け寄ったのは、『NOTICE』のドア。
そのドアの看板の上には、ポゥッと赤い光が灯っていた。
光っていたのは、ナンテンを思わせるような小さくて丸い宝石。珍しい宝石みたいで、お母さんがビックリしながら名前を教えてくれたけど、忘れてしまった。
それよりも、宝石が光っているということは通知が来ていることだ、というほうがエリタにとっては重要だ。
『NOTICE』のドアの向こう側には、自分の作品に対する反応や自分へのコメント、『E』の部屋の管理人からの連絡が保存されている。それが増えると、宝石が光るようになっているのだ。
昨日新しく作品を公開したエリタは、どんな反応が来ているか楽しみで仕方がない。
大急ぎでパタンとドアを開けると、沢山の星がさぁっと煌めきながら川の水のように流れ出してきた。
「わっ、きょ、今日はこんなに……!」
この星は、エリタの作品を読んだ人が『読んだ』という印や応援の気持ちとして送ってくれるものだ。エリタも面白い作品を見かけるたびに星を送っている。
魔法で具現化する星ではなく、泡に触った時に原稿用紙と一緒に出てくるものなので、魔法が使えないエリタでも簡単に送れるところがお気に入りだった。
「十、十一、十二……うわぁ、数えきれない!」
エリタの足元にキラキラ輝く池を作っている丸い星を、手ですくいあげる。
赤い通知の光を透かして、紅が滲む黄金色の星。
今では星が百個たまることもあるのだから、星五つで大喜びして、お母さんに報告していた頃が懐かしい。
「本当に、みんなたくさん送ってくれるなぁ……」
エリタは星の中に座り込んで、ひんやりとした温かい感覚を味わいながら微笑んだ。
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