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新しい部屋
人の温もりのある部屋は
落ち着ける匂いがある
別に良い匂いという訳じゃない
なま温かい
人の情けの匂い
その部屋は六畳の和室
畳は張り替えたばかりで
井草の匂いしかしなかった
暖色系の蛍光灯が煌々と点る
循環式のボイラーが部屋を温めている
パイプ式の2段ベッド
上に上がる梯子は
どこか公園の遊具のようで
子供は
おもわず手を掛けた
錆びた所を新しい灰色で
綺麗に塗り直してあった
子供は
それをしばらく見つめた
スプリングの効いたマットは
真っ白なシーツに覆われて
まだ冷たい厚手の毛布と
まだ冷たい蕎麦枕が乗っていた
ほっとしていた
そして
さびしかった
窓の外には雪
ちらちら ちらちら と
外の椿は部屋の灯りに頬を染めて
月はクレーターまで
はっきり見えた
少し変わった事と言えば
その窓には
鉄格子がついていた
女の人がやって来て
「もう寝る時間よ」
そう言って
部屋の灯りを消した
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