密会

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 僕は五十を超えた既婚者である。彼女と知り合ったのは、五か月前の暑い日の午後、東横線の某駅のドーナッツ店で涼んでいると、隣のテーブル席に座ったのが彼女だった。追加のコーヒーを頼もうと手を挙げている僕に、手洗いから席に戻る途中の彼女が気付いて、店員を呼んでくれたのが切っ掛けだった。 「ありがとうございます」  僕が席に戻った彼女に礼を言うと、彼女は微笑んでくれた。  僕はその日、些細な事で妻と喧嘩をして、家を飛び出していた。彼女も何か事情があったのだろうか、お互いにしゃべり相手を探していた。最初は当たり障りの無い話をして、お互いの家庭の悪口をした。共に年頃の娘がいるということと、彼女がウサギを飼っていて、僕が猫を飼っていることを知った。  それから小一時間、話をして、ラインのIDを交換して、一緒に店を出た。
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