密会

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 三回目のデートでは、「会うなら都内がいい」と彼女が主張するので、人の混雑を避けるために、都内の渓谷で会うことにした。彼女からするとアウェイの場所だったで、案の定、電車を乗り間違えて、遅刻だった。  渓谷の緑は美しく、流れる清流とひんやりとした風が気持ちよかった。僕たちは渓流横に腰を下ろして、寄り添って、お互いに体温を感じた。  僕が思い切って、ホテルに誘うと、彼女は当然の事のように僕の手を取った。その日、ラブホテルで僕たちは結ばれた。  お互いに結婚をしているし、家庭を大切にしていることは分かっていた。それに僕たちは、ラインでのやりとりを行う際も、家庭や個人の情報にかかわる話は極力避けていた。知っているのは、お互いに配偶者がいて、娘がいることと、僕がサラリーマンで、彼女が片手間でバイトをする専業主婦であるくらい。年齢も四十代と五十代で十くらい離れている事だけ。今日、どういうテレビをみたとか、旦那のこんな嫌な事があったとか、娘が勉強をしないとか、深夜寝る前だとエッチな妄想を共有した。  妄想から分かったことは、彼女が男になりたくて、僕が女性になりたいということ、現在のセックスが気持が乗らず、夫婦間では長期間のレス状態になっていることだった。そしてお互いにその状態に諦めていて、これが死ぬまで延々と続くんだろうなと考えていたことだった。  それに、この関係は泡みたいなものだから、いつ消えるか分からないと感じていた。
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