密会

　彼女の都合で、密会の後、時間調整のため、いつもの帰る時刻まで、駅傍のファミレスで時間を潰す。
　会う度に、結局、夫婦とは何だろう、また、思考の迷路にはまり込んだ。
　ずっと、いっしょに生活をして、子供を作って、何か事があると支え合い、守り合う。一人で暮らす事に比べ、失うものも多いが、得るものも多いといわれるが、そうなのだろうか。愛情も感じるし、お互いに信じ合う気持ちもあるが、物足りない。逆に、密会の後の方が、家に戻ると優しくなれる面もある。
　きっと、彼女も同じなのだろう。夫との毎日の暮らし、主婦としての色々な雑事や面倒を、毎日、こなして生きている。自分の満たされない心の欠損をお互いに補う必要があるのだろう。
　そうこうしているうちに、その日も、ラインにメッセージが届いた。
「今帰った。今日もありがとう。楽しかった」
　彼女らしい、短いメッセージだった。
「こちらこそ、ありがとうございます」
　だけど、僕の返したメッセージは、ずっと既読にはならなかった。主婦業は忙しいのだろう。