密会

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密会

 東京都の新型ウイルスの感染者が千人にも迫ろうとしている年末の土曜日、僕は仕事と偽って、電車に乗って、都内のとある駅の改札口で彼女を待っていた。  クリスマスを控えた週末としては、人出は少ないように感じるが、改札から吐き出されるマスクを着けた人たちの流れは、絶える事はなかった。  約束の時間から五分くらい遅れて、彼女が現れた。短めの暖かそうなジャケットにデニムのパンツの姿。ぱっと見ただけだと、三十代といっても通じる女性だった。  彼女と会うのはこれで七回目だった。月にほぼ一回のペース。彼女と会う時は心が少年の様にときめいた。  彼女は僕を見つけると、嬉しそうに手を振った。僕は改札を抜けた彼女の手を取ると、街に出た。  いつものようにランチを食べるために、駅ビルに入った。僕が、中華料理店の鉄板餃子のディスプレイを見ていると、彼女は言った。 「臭い仲になるのもいいかもね」  僕は思わず笑ってしまった。
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