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これは僕らの愛のかたち
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「さっきはごめん」
インターホンがなる。
扉を開けば、困り眉をした彼女が上目遣いで僕を見上げている。
「…おかえり、」
「…うん、ただいま、」
彼女は瞼をそっと下げて、それから力なく笑う。
玄関で見せるその表情を、僕は何度彼女にさせてきたのだろうか。
なんにも面白くないのに、僕は同じように無理やり口角を上げた。
「…お風呂、入ってきなよ」
「そ、だね、そうする」
傘を閉じて立てかけた。
雨はまだ降っているらしい。きっと彼女の身体は冷え切っているだろう。
ごめんね、
その意味を、僕はあえて聞いたりなんかしない。
彼女は、それをわかったようにもう一度僕に「ごめんね」とつぶやいた。
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