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彼女のセミロングの髪の毛を乾かすのにそんなに時間はかからなかった。
髪の毛を乾かすのが苦手だからロングはやめた、
そう言っていたけれど、半年ほど前の彼女はめんどくさいけど髪の毛を伸ばしたいって言い張っていた。
「…ねえ、燿」
「うん?」
「…ゆるして、くれる?」
ドライヤーの音に逃げるように、彼女の声は小さかった。
でもそれを聞き逃すほど僕は子供ではいれない。
なあ、きみと生まれた年が同じだったら、
きみよりも早く生まれていたら、
素直に、僕だけを見てくれた?
きみに釣り合うようになりたかった。
…きみだけを、みているのは、僕だけなのだ。
「…うん、いいよ」
ぱあ、と彼女の表情が明るくなる。
本当にまっすぐで、素直で。
そういうところが可愛い、そう言えば、うれしそうに笑うんだろ。
ドライヤーを持つ手に彼女の手が重なる。
かち、と無理やり止めたのちに、彼女の唇が近づいてきた。
──ああ、今日も。
僕は彼女の思うままだ。
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