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十二月の後悔
「待てよ。響子!」
「離してっ! 耀なんか大っ嫌い!!」
抱き竦められようとしたその腕を思い切り拒絶し、無我夢中でそのけばけばしいピンク色の部屋から逃げ去った。
樹
樹
樹……!
なんとか耀の手を振り切ったことを躰で感じ、やっと足を止めた。
「う……」
こみ上げる嗚咽。溢れてくる涙を拭うこともせず暗い路上、コートを脱ぎ捨てて来た身には酷く冷たい十二月の寒風に晒される。
樹……ごめん……。
わからない
わからない
わからない
私は……。
耀のことなんて……!
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
こんなことはみんな悪夢だ!
しかし、どれだけ悔いても覆せないその出来事が私の上に、次第に現実味を増し、のしかかってくる。
それは、私がこれからずっと背負っていく重い、重い十字架。
私は……。
私は……。
私は何故、よりにもよって、誰よりも愛している樹を裏切ってしまったんだろう……!
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