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「…本当に、もう別れようと思った、」
二度と会わない、もう会えない、
覚悟して、出てきたはずだった。
わたしじゃない誰かが隣に並ぶことも、絶対に許せないのに見ないふりをすればどうにかなると思っていた。
きれいさっぱり忘れるなんてできないくせに、この気持ちを思い出として封印すると決めていたのに。
そう、決めたのに結局私はここにいる。
奪われたチケットを、ほんとうは目の前で破ってやろうと思った。
びりびりに破いて、そのままこの恋情ごと粉々にしてしまいたかった。
それが奪われる前から、
とっくに、そんなことできないってわかっていたのに。
悔しくて震える唇をきゅっと噛みしめて、じわじわ滲んでくる涙はこれ以上ごまかすことなんてできなくて。
あなたのライブのせいで私の涙腺はとっくに緩んでしまっているのだ。
わたしのことしか考えていないようなセトリで、下手くそな愛を紡いで。
それがどれだけ私の心に響いていたかわからないんでしょう。
「どんどん遠くに行くし、置いてくし、帰ってこないし、否定の言葉だって全部嘘に聞こえるし」
信じたかった、
信じてたんだ、ずっと。
言葉になんてしてくれなくても、じゅうぶんだった。
でも言葉にしてくれないから、不安だった。
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