ネガティヴ・アクセル★1-2

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ネガティヴ・アクセル★1-2

 普通ならまだ一人二人この位置から狙ってもいいのだが、分が悪い。俺は一旦中央通りに戻り、ベルサール秋葉原の中へ入る。その(あいだ)にも、友軍は次から次と(たお)されていく。  二人目を殺ったとき、敵に位置を気づかれてしまった。どうしてもこちら側からは狙いづらい場所を計算しながら、敵はスモーク・グレネードを投げ、煙幕の中を走ってくる。熱を感知するサーマル・ヴィジョンを着けたときには遅かった。  それでも俺は上が崩れた円柱に隠れ、相手がどう出るか待った。目、そして銃を把持(はじ)する手、最低限しかこちらを出さずに。  そのあとはただ狙い撃ち(エイム)精度の勝負だった。  かつて偉容を誇っていたベルサール秋葉原の三階、あちこちに弾痕が残っている。そういえばアニメのイベントなどがここであったが、俺は入った記憶がない。  敵の銃が見えた。  そして、閃光(マズル・フラッシュ)が。  俺も反射的にスナイパー・ライフルを撃つ。  だが、それは当たらずに俺の視界が深紅に染まった。  キル・カメラで俺が射殺される様子が三人称視点で再現される。ちょっと階段から身体を出し、それだけで俺の目をスコープごと撃ち抜いたのだった。  ハンネはLuna、MoonBlasterのリーダーだった。  戦いはMoonBlasterの圧勝だった。  Lunaは女性だという噂がある。俺がいままで一度も撃ち勝てたことのないアンジェリカもそう。  俺はアンジェリカを思い出して「レストレス・ドリーム」からログアウトし、パソコンをシャットダウンした。  朝起きて、ずっと今まで「レストレス・ドリーム」に浸かっていた。  かんだ食堂なき今、俺はマスクを着け、アンジェリカの勤めているメイド喫茶、「potpourri(ポプリ)」へ出かけた。コロナ禍にあってもそれは俺の日課だったから。
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