大好きな君よ、いなくなれ

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 窓から差し込む柔らかい光、小さく揺れる白いカーテン。部屋に立ちこめるコーヒーの香り。  思い出すのは君の横顔。  ただコーヒーを飲むだけでちらつく、あの表情。もう隣には居ないと分かっているのに、度々右側を確認してしまう私。  馬鹿だなあ、私は。  無口な君が好きだった。時々微笑む君が、本当に好きだった。言葉を過去形で紡ぐのが、こんなに辛いことなんて知らなかった。  忘れたつもりだったのに、不意に思い出してしまう。何気ない瞬間に、君が隣にいた頃の記憶が、楽しかった思い出が、溢れて止まらなくなる。  どうすればいいんだろうね。もう、分かんないや。  君との思い出を捨てられずにいる私を……幸せそうな写真を握って泣きじゃくる私を、君はどう思うのだろう。  涙の止め方を忘れてしまったみたいだ。胸が痛くて苦しい。嗚咽が止まらない。息が出来ない。  これを捨てれば、忘れられる?  大切な思い出を目の前から消し去れば、私の後悔は消えるだろうか。握った跡と涙でぐしゃぐしゃになった写真たちを、破きでもすれば全て忘れられるだろうか。  この辛さから、解放されるだろうか。  私は写真のふちをつまんだ。頬は濡れて、日光に反射している。相変わらず、部屋にはコーヒーの香りが立ちこめている。  まるで、本の一ページをめくったかのような乾いた音が、部屋に響いた。  細かく分かれた紙片が宙を舞う。これで、私の恋は終わり。  さよなら――大好きだった君。  君が私の中から居なくなりますように。そう願って、紙片を捨てた。
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