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いなくなったのは
「まず最初にいなくなったのは、西河さん、その次が綾辺さん、その次が久留木さん……」
私は、有里さんが次々と挙げる名前にじっと耳を傾けつつ、何か思い出そうと必死に頭を働かせた。が、どんなに考えても、それらの名前は初めて聞くように響く。
もし有里さんの話が本当なら、私にはずいぶんと友達が多かったようだが…… 彼女らとの思い出は何ひとつ、蘇っては来なかった。
「佐吉さん」
最後に上げられた名前に、一瞬、何かが引っ掛かった気がした。
何だったか、具体的には全くわからない。けれども、最近、何かあったような……?
必死に、そこから記憶を手繰ろうとする…… だが、そうすればするほど、するりと結び目がほどけてしまったように、何も出てこない。
「…… だめだ。知らない」
「本当に? 道下さんとは隣の席で、一番仲が良かった子だよ」
「ねえ、有里さん。私は、有里さんの言うこと、全部信じたわけじゃないよ?」
だんだん、イライラしてきた。
有里さんの言葉にはやはり、 『一番の友達さえ覚えていないなんて』 という棘が含まれている。
「確かにクラスの人数は減っているけど、私も誰も知らない名前を持ち出されても。有里さんが嘘を言ってるってことだって、考えられるじゃない」
「嘘じゃないよ」
「じゃあ、嘘じゃないって証明してみてよ」
「それは難しい」
「どうして?」
「だって 『お掃除』 の能力で消すと、世界のどこからも消えちゃうんだもん。わたし以外の人の記憶からも、きれいさっぱり、ね」
-- 物でも人でも 『最初から無かったこと』 になってしまう、と、有里さんは寂しそうに呟いた。
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