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世間の総意
「道下さんは一番ずるいよね。ほかの人を操って、わたしをいじめさせたんだから」
有里さんの主張では、私は直接に手を下すことなく、ちょっとした発言などで、周囲の人をいじめに向かわせるタイプだったという。
-- もし本当なら、確かに私は、女王様気質の見下げ果てた人間、ってことになりそうだが…… 正直、自身を反省するよりもまず、呆れた。
私がしていたことなんて、おそらくは、周囲から浮くことのないように空気を読んで発言し、追従笑いをする…… その程度のことだったろうに。
もし、そのせいで周囲がいじめにむかったのだとしても、それは私のせいではなく、クラスという名の世間の総意だったのだろう、と言いたい。
「有里さんさ、体育祭でバトン落としたせいでクラスが負けても、一言も謝らなかったじゃん」
「なに? あの時、壇上にでも立って 『私のせいで負けて、ごめんなさい!』 と頭下げなきゃいけなかった、っていうの?」
「そうだよ。そうすればきっと、誰も腹を立てたりしなかったよ」
「そんなこと…… できる人とできない人がいるでしょう!?」
「だから、 『できない』 だなんて甘ったれたこと言ってる人は、生存競争における勝率が下がるだけ」
高校生にもなって、そんなことが分からない方が、どうかしてる。
きっとこれまで、よほど温い環境にいたんだろうな。
相手が面と向かってこっちを非難してきている以上、私が、譲歩したり頭を下げたり同情する必要なんて、ないんじゃないかな…… 世間なんて、もともとが闘いの場なわけだし。
-- 私はゆっくりと、常日頃から彼女に対して下していた評価を、吐き出した。
「有里さんってさ、随分とおめでたいよね。私から言わせれば、有里さんこそ女王様気質だよ」
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