1. 素晴らしい世界

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寝起きが悪いのは静真も同じだったので 哉芽を無理矢理起こそうとは思わない。 起こすのが可愛そう、とも思う。 一緒に暮らすようになって、別々の部屋を 与えられてからは、逆に一緒に寝る事も減った。 今日は久しぶりだ。 久しぶりに一緒に寝たら、さすがにデカい。 まださすがに身長は抜かれてないけど、 自分の身長の伸び率が少なくなって来たから そろそろヤバい気がしている。 哉芽が片足を静真の腿に乗せ、抱き枕にされ さすがに窮屈だった静真は、哉芽の膝を 持ち上げるようにして 向こうに押しやった。 哉芽はそれにあわせて、寝返りをうって ベッドの端から落っこちそうになった。 落ちるっ!そう思った静真があわてて 哉芽の腰を掴まえて引き寄せた。 落ちなくて良かったと、ホッとすると 今度は静真が哉芽を抱き抱えた状態になっている 事に気づいて、ちょっと妙な気分になった。 哉芽の髪から香るシャンプーの香り。 自分と同じ香りのはずなのに、やけに甘く感じて そのまま深く吸い込んでみる。 哉芽は静真の呼吸を感じて、うるさそうに 首をふり、逆に静真の方を向いて止まった。 鼻がぶつかりそうな距離で、腕の中の弟を 見つめる。 何故か呼吸を止めて。 大きな目を縁取るように並んだ長い睫毛。 ぷくっとした涙袋。 スッと通った鼻筋。 わざと尖らせたようなアヒル口。 アヒル口が薄く開いてスースーと息がもれている。 無意識にその唇を指でなぞると、哉芽が眉を寄せて 顔を背けた。 その動きにハッと我にかえり、手を引っ込めた。 ー 俺は何をしてるんだ バカ! その唇があんまりふわふわと柔らかそうで、 触れてみたくなったのだ。 まだスベスベの子供の肌。 腕を顔の上で折り曲げて、うるさいモノから 顔を隠して眠り続ける。 ー ………可愛い… 今度はそっと気づかれないよう髪を撫でた。 無反応だったので、半分腕で隠れた顔を 眺めながらしばらく撫でていた。 それは犬や猫にする行為と変わらない。 そこに居たら、なんとなく手を伸ばし その感触を確かめたくなる。 喉をゴロゴロ鳴らして、もっと撫でて、と すり寄ってくるまで撫でたくなる。 そんな感覚だった。
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