1. 素晴らしい世界

11/15
前へ
/485ページ
次へ
突然の出来事に、静真と昊は露骨に驚いた顔で 哉芽を見て、咄嗟に持っていた携帯を ソファーがわりにしている大きめのクッションの 下に隠した。 「の、ノ、ノックしろよ!」 「………いつもそんな事 言わないじゃん」 ドアの前でキョトンとした顔で固まる哉芽に なおも静真が声をあらげた。 「ひ、人が来てる時はダメだろっ…!」 真っ赤な顔で慌てふためく静真を見て ついに昊が笑い出した。 「いや、静真…慌てすぎでしょ?」 「あ、あわててねぇよ!!」 「………なんか変なの見てたんだ」 哉芽が怪しんだ目で静真を見た。 普段どちらかと言えば物静かな静真がこんなに 狼狽えるなんて…。 「見てねえって!」 昊はついにお腹を抱えて笑いだし、笑いすぎて 目に浮かんだ涙を手の甲で拭きながら あ~おかしぃ、、なんて言って静真を見る。 「僕も見たい」 「見せるかバカ!」 「あ、やっぱりなんか変なの見てたんじゃん」 「いいじゃん見せてやれば」 昊が小さな丸いテーブルに肘をついて ニッと笑った。 「は…!? コイツ小学生だぜ?」 「俺らだって小4?5? くらいの時に公園で エロ本拾って、二人でこっそり読んだじゃん」 言いながら勝手に手招きをして、哉芽を部屋に 招き入れる。 ー だからって…!これは…エロ本なんて かわいいものじゃないし! 静真達が見ていたのは、どこでどうやって 手に入れたかは知らないが、友人たちから 回り回って届いた、無修正のエロ動画だ。 アソコが丸見えの外人が格闘技のように 激しく交わるという、小学生には刺激が 強すぎると思われる映像だった。 ー こんなのカナに見せたくない… 昊は面白がって、哉芽を隣に座らせてシーっと 口の前に人差し指を立てた。 哉芽はうなずいて、昊の携帯を食い入るように 見つめる。 「カナ絶対母さんに言うだろ? やっぱりみちゃダメ!」 静真が昊の携帯を取り上げた。 「言わないよ、言うなら今から行ってくる!」 再生される直前で目の前から奪われて 哉芽はムッとした顔で静真を見た。 「ほら~ だよなぁ?」 昊が静真から携帯を取り返して、ついに動画は 再生された。 無言で表情も変えず携帯の画面を見つめる哉芽を 苦々しく静真は見守った。 可愛い弟が下品なAVを見ている…。 なぜこんなに気持ちが悪いんだろう。 自分はさっきまで、昊と半勃ち状態で楽しんで 見ていたくせに。 哉芽には見せたくないのはどうしてか…。 息を止めるように、膝を抱えた姿勢で 画面を凝視している哉芽。 ー 哉芽が汚れてしまう………。 可愛くて、無邪気でキレイな哉芽が 汚される…。 そんな気がして見せたくなかったのだ…。
/485ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1274人が本棚に入れています
本棚に追加