1. 素晴らしい世界

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正式に一緒に暮らすようになってから まだ少ししかたっていないのに 堂々と母の事を好きだと言える哉芽のことを すごいと静真は思っていた。 自分だったら照れて言えない。 父の事をあんな風に好きだと言えない。 無邪気に母や自分に接してくれる哉芽に 感謝していた。 哉芽も再婚が決まるまでは鍵っ子で 父の仕事が特に遅くなる時には祖母が来ては 哉芽の面倒を見てくれていた。 寂しくないと言えばウソになるが、哉芽は それほど自分の境遇を悲観してもいなかった。 慣れっ子と言ってもいいかもしれない。 1人はそんなに悪くない。そう思っていた。 それは静真も同じだった。 ・ ・ 部活が終わり帰宅すると、玄関を開けた瞬間に カレーの匂いが届く。 リビングに入ると哉芽が母とテレビゲームで 盛り上がってた。 ワーワー、キャーキャー賑やかに。 「またやってんの?」 「だってもう少しでクリアなんだもん、ねぇ!?」 「静真、おやつテーブルの上ね」 母はテレビの画面を見ながら言った。 静真は笑ってハイハイ、と返事だけして 着替えるために自分の部屋に向かった。 「ギャー!食べちゃったゴメン!!」 「あー!お母さん早く出して!だして!」 階段を登る静真の背中を、ゲームで盛り上る 賑やかな声が追いかけて来て静真はつられて笑った。 静真がリビングに戻ると哉芽がチラっと 静真を見た。 ダイニングテーブルでおやつを食べ始める 静真に向かって、俺にもジュース汲んで!と 言いながら、一緒にテーブルにつく。 「もーお母さんパニクるとすぐ 僕の事、食べちゃうんだもん」 「だって、このボス忙しくて…慌てちゃうの」 二人が話してるのは、もちろんゲームの話だ。 哉芽に一緒にやろうと誘われて以来、母は思いの外 テレビゲームにはまって、哉芽が居ないときも 時間に余裕ができたときは1人で楽しんでいた。 毎日時間に追われていた時には見れなかった姿に 最初のうちは驚いたが、今ではすっかり見慣れた 光景になった。
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