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正式に一緒に暮らすようになってから
まだ少ししかたっていないのに
堂々と母の事を好きだと言える哉芽のことを
すごいと静真は思っていた。
自分だったら照れて言えない。
父の事をあんな風に好きだと言えない。
無邪気に母や自分に接してくれる哉芽に
感謝していた。
哉芽も再婚が決まるまでは鍵っ子で
父の仕事が特に遅くなる時には祖母が来ては
哉芽の面倒を見てくれていた。
寂しくないと言えばウソになるが、哉芽は
それほど自分の境遇を悲観してもいなかった。
慣れっ子と言ってもいいかもしれない。
1人はそんなに悪くない。そう思っていた。
それは静真も同じだった。
・
・
部活が終わり帰宅すると、玄関を開けた瞬間に
カレーの匂いが届く。
リビングに入ると哉芽が母とテレビゲームで
盛り上がってた。
ワーワー、キャーキャー賑やかに。
「またやってんの?」
「だってもう少しでクリアなんだもん、ねぇ!?」
「静真、おやつテーブルの上ね」
母はテレビの画面を見ながら言った。
静真は笑ってハイハイ、と返事だけして
着替えるために自分の部屋に向かった。
「ギャー!食べちゃったゴメン!!」
「あー!お母さん早く出して!だして!」
階段を登る静真の背中を、ゲームで盛り上る
賑やかな声が追いかけて来て静真はつられて笑った。
静真がリビングに戻ると哉芽がチラっと
静真を見た。
ダイニングテーブルでおやつを食べ始める
静真に向かって、俺にもジュース汲んで!と
言いながら、一緒にテーブルにつく。
「もーお母さんパニクるとすぐ
僕の事、食べちゃうんだもん」
「だって、このボス忙しくて…慌てちゃうの」
二人が話してるのは、もちろんゲームの話だ。
哉芽に一緒にやろうと誘われて以来、母は思いの外
テレビゲームにはまって、哉芽が居ないときも
時間に余裕ができたときは1人で楽しんでいた。
毎日時間に追われていた時には見れなかった姿に
最初のうちは驚いたが、今ではすっかり見慣れた
光景になった。
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