1. 素晴らしい世界

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「あ、お兄ずるい。アイス食ってる」 静真は母が用意していたおやつとは別に 勝手に冷凍庫から出してきたソフトクリーム形の アイスを食べていた。 「それ、お母さんが1人でこっそり食べるつもり だったのに~」 母が1人でコントローラーを握りしめ テレビに釘付けになりながら文句をこぼした。 「一口ちょうだい」 言われた静真は少し考えた。 ガッツリ口をつけてしまったし、哉芽が口をつけた アイスを食べるのも抵抗があった。 「やだよ」 あげたくないわけではなかったけど そう答えると、哉芽はムッと静馬を睨んだ。 じゃあスプーン持ってこい、そう言おうとした瞬間 哉芽は、アイスをもつ静真の手を、両手で掴まえて 強引に引き寄せると、ガブっと大きな口で アイスを食べた。 静真は驚いて、呆然と哉芽の口の跡のついた アイスをポカーンと見つめた。 「あ、お母さん!そこにアイテムあるんだよ!」 呆然とする静真を無視して哉芽は ゲームをする母のもとへ戻って行った。 ー え、何アイツ … 他人の食いかけとか もう食いたくないんだけど… 静真のモヤモヤなんて全く気づかず ゲームに盛り上がる二人を眺めた。 ー もう要らないから、お前が食えよ! なんて言ったら哉芽はどんな顔するだろう 悲しむのか、何も考えず、やった~!アイス! なんて言って喜ぶのか…。 静真は結局アイスの続きを食べた。 別に、何も変わらなかった。 当たり前だけど…。 哉芽が食べる、前と後。 哉芽は平気だ。 汚くない。 哉芽のだったら大丈夫。 静真は自分でも気づかないくらい。 哉芽の事を身近な存在として受け入れていた。 哉芽はもう他人じゃない。 可愛い弟だ。 「お兄、はやく一緒にやろうよ!」 リビングのソファーに立って、静真を呼ぶ。 ちょっと面倒に思っても、結局可愛くて 言うことをきいてしまう。 「ハイハイ」 自分は案外、ちゃんと “兄” が できているのかもしれない。 そう思った。
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