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「あ、お兄ずるい。アイス食ってる」
静真は母が用意していたおやつとは別に
勝手に冷凍庫から出してきたソフトクリーム形の
アイスを食べていた。
「それ、お母さんが1人でこっそり食べるつもり
だったのに~」
母が1人でコントローラーを握りしめ
テレビに釘付けになりながら文句をこぼした。
「一口ちょうだい」
言われた静真は少し考えた。
ガッツリ口をつけてしまったし、哉芽が口をつけた
アイスを食べるのも抵抗があった。
「やだよ」
あげたくないわけではなかったけど
そう答えると、哉芽はムッと静馬を睨んだ。
じゃあスプーン持ってこい、そう言おうとした瞬間
哉芽は、アイスをもつ静真の手を、両手で掴まえて
強引に引き寄せると、ガブっと大きな口で
アイスを食べた。
静真は驚いて、呆然と哉芽の口の跡のついた
アイスをポカーンと見つめた。
「あ、お母さん!そこにアイテムあるんだよ!」
呆然とする静真を無視して哉芽は
ゲームをする母のもとへ戻って行った。
ー え、何アイツ … 他人の食いかけとか
もう食いたくないんだけど…
静真のモヤモヤなんて全く気づかず
ゲームに盛り上がる二人を眺めた。
ー もう要らないから、お前が食えよ!
なんて言ったら哉芽はどんな顔するだろう
悲しむのか、何も考えず、やった~!アイス!
なんて言って喜ぶのか…。
静真は結局アイスの続きを食べた。
別に、何も変わらなかった。
当たり前だけど…。
哉芽が食べる、前と後。
哉芽は平気だ。
汚くない。
哉芽のだったら大丈夫。
静真は自分でも気づかないくらい。
哉芽の事を身近な存在として受け入れていた。
哉芽はもう他人じゃない。
可愛い弟だ。
「お兄、はやく一緒にやろうよ!」
リビングのソファーに立って、静真を呼ぶ。
ちょっと面倒に思っても、結局可愛くて
言うことをきいてしまう。
「ハイハイ」
自分は案外、ちゃんと “兄” が
できているのかもしれない。
そう思った。
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