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ゴールデンウィークに静真は念願の携帯電話を
手に入れた。
中学生になるまではダメだと言われ、ずっと
我慢して、家電量販店でパンフレットをもらっては
どのメーカーの端末を買おうかとワクワク
待っていた。
夢にまで見たスマホ!
部屋にこもっていじり倒していると
哉芽が現れて、羨ましげに静真が携帯を
いじるのを眺めた。
「いいな~ 俺もほしい~」
ベッドに寝そべってアゴの下に枕を抱えて
携帯でYoutubeを見る。
その静真の背中の上に哉芽が股がって乗っかり
静真の肩に顎を乗せて一緒に携帯を見た。
「重い…カナ、降りて」
「ヤダー、 ゲームの裏技とか見せて~」
「もー見たら寝ろよ~」
「うん、寝る」
大人しくはなったものの、背中からは降りず
静真の背中の上に被さったまま、携帯を見る。
哉芽は初対面の時の少年とは別人のように
静真になついていた。
見たいテレビがある時など、待ちきれずに
静真が入っているお風呂にも勝手に入ってきて
勝手に出ていく自由人だ。
最初は戸惑う事も多かった静真も、今では
すっかり慣れ、これが哉芽の距離感なのだと
気にしなくなった。
「はい、おしまい。カナ部屋行け」
首だけ後ろを見ても哉芽の顔は見えず
ベッタリ静真の肩に顔を乗せて動かない。
「……カナ?」
やけに重いと思ったら寝ている。
スースー寝息をたてて。
静真は体を傾け哉芽をベッドにゆっくり降ろして
立ち上がると、ぅーっと声を上げて伸びをした。
「あーー、、重かったっ」
「うう~ん」
哉芽はベッドの上で丸くなった。
「カナ部屋行けよ」
「………めんどくさい…」
そう言って布団を巻きつける。
時計は11時をまわっていた。
しばらく見ていても動かないので、静真は
ため息をついて、哉芽の隣に横になって
明かりを消した。
ー さすがに狭いな…
哉芽とひとつのベッドで眠るのは初めてじゃない。
まだ正式な家族になる前に、お互いの家に泊まり
遅くまでゲームをしたり、マンガを読んだり
しているうちに寝てしまい、気づけば朝…
なんて事は珍しくなかった。
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