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私は天体望遠鏡の箱を開いて、中身を組み立てた。
高さを調整して、ピエロの目に宛がう。
しばらくして、今度は私もその望遠鏡の中を覗いてみた。
月のクレーターや盆地が確認できるたびに
その名前や情報が頭に浮かんできた。
一つ見つけると次、そしてまたその次。
そうしてクレーターを三十あまり見つけたあとで
月はマンションの影に消えてしまった。
思い出して背後の壁を確認すると
月が見えなくなるのと同じように
ゆっくりとピエロの顔が薄くなって、最後には消えた。
私は天体望遠鏡を部屋の片隅に立ててから
今日の課題のレポートを削除した。
机に横たわった航空力学の専門書を引っ張り出して
目次を確認する前に、ツイッターを開いて写真をアップロードした。
その写真には
「私は世界初の女装宇宙飛行士になります、皆さん応援よろしくね!」
とコメントをつけた。
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