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耳を立てた兎のように、周囲を気にしながら少し待った。
それでも何もないみたいだから、意を決して部屋の明かりを点ける。
浮かび上がったのは、ようやく見慣れてきたいつも通りの私の部屋だ。
ベッドから出て、玄関へ続く扉をこわごわと開く。
その先を明るくしてみても、普段と変わったところはなさそうだった。
鍵もチェーンロックもしっかり掛かったままだった。
もしかして、スマホがアップデートでもしたのかな。
私はない胸を撫でおろしながら、部屋に戻った。
「うわっ!」
思わず腰を抜かしそうになった。
それに太い声で叫んでしまった。
逃げ出そうにも、突然のことに足が硬直してしまって動けない。
「なんなの、これ?」
私がさっきまで寝ていたベッドのすぐ傍の壁に
引き攣ったように嗤うピエロの顔が
くっきりと浮かび上がっていた。
顔の半分もある真っ赤な唇は思いっきり釣りあがってて
瞼を黒く塗られた目は、目玉が飛び出しそうなくらい強く見開かれている。
そして、視線の先にある何かをじっと見つめている。
純粋な狂気が抑えきれずに漏れ出してる。
そんな顔が私の部屋に突然現れていた。
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