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結局私は、ただひたすらピエロの顔を監視して過ごすしかなかった。
今にも目玉がぎょろりと動いて
私のことを見つけてしまうんじゃないかという恐怖。
目を離した隙に隠れてしまうのではないかという不安。
私は、ひたすらに夜が過ぎるのを待つことしかできなかった。
そうして、どれくらい時間が経ったのかわからないけど
一向に朝日が昇る気配はなかった。
希望を求めて窓の外を覗くと、マンションの影に丁度月が隠れたところだった。
「嘘、どこ行ったの」
月影に気を取られていた意識を部屋に戻すと
ピエロの顔は壁から消えてしまっていた。
四方をぐるりと見回しても、どこにもあの異常な顔つきは見当たらない。
足元や天井、玄関や洗面台まで洗いざらいしたけれど
どこにもいない。
ひとまず安心して、いいのかな。
「ふぅ、なんだったのかな」
どうしよう、事故物件だったのかな。
大学の為に上京してまだ三ヵ月なのに
また次の家を探さなくちゃいけないかもしれない。
姿見に自分の身なりが映っていた。
とてもじゃないけど外に逃げ出せる姿じゃなかった。
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