6人が本棚に入れています
本棚に追加
ベッドから飛び起きて背後を確認すると
案の定、あのピエロが壁に浮かび上がっていた。
昨日と変わらぬ不吉な表情が、視線の先にある何かを一心不乱に見据えていた。
後ずさりながら部屋の隅へと移動する。
途中で何かに躓いて、足元を見ると
無造作に置かれた天体望遠鏡の箱が埃をかぶっていた。
そういえば、東京に来てから一度しか空を見ていない。
周りに一年遅れて始まった憧れのキャンパスライフ。
自分だけで自由に使える家や時間。
二十歳になってからは宴会にも参加するようになって、
そうして気が付けば上京してから三か月が経っていた。
私は部屋の隅に体操座りをして、ピエロの監視を始めた。
あのピエロはいったい何者で、目的はなんだろう。
あれほどまでに夢中になって見つめるものって。
気になってその視線を追ってみる。
ピエロの臨む先には、窓があった。
おそらくこの時間、その先には月が見えているはずだった。
そういえば、以前は私も同じように、熱を帯びた視線で夜空を眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!