仕事終わりのアルコール

4/5
133人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
違う、色んなお客さんに言ってるんだ。私をからかってるだけ。 154センチと小柄な私。顔立ちは年相応だけど、子供扱いされることは少なくない。 「那月ちゃんって年いくつ?…あ、真子ちゃんの同僚だから同じか」 ほら、来た。 「25です。真子はひとつ上です」 「へぇ…」 「満島さんはおいくつなんですか?」 「俺?28」 「あ、兄と同い年ですね」 「ふーん、お兄さんいるんだ」 私ってば、プライベートな情報をペラペラと…。 「っ同じのもう一杯いただけますか?」 話を反らした感丸出し。 やっちゃった、と内心でこっそり後悔。 満島さんは私の心の中を知ってか知らずか、目を細めると「かしこまりました」とシェーカーを振り始めた。 「―はい、どうぞ」 「ありがとうございます」 コクリ、と一口。 やっぱりおいしい。 「このお仕事、長いんですか?」 「んー…きっかけは大学入ってから始めたバイトだから、長いと言えば長いね」 「そうなんですか…」 相槌を打ちながら、グラスを傾ける。 不意に、顔がじんわりと熱くなってきた感覚に襲われた。 慣れない場所で、しかも初対面の人と二人きり。 おまけに決して得意ではないアルコール…と来れば、酔いも早くなるのだろうか。 少しずつ、そしてゆっくりと、残りのグラスの中身を口に含む。 「…満島さん、ごちそうさまでした。お会計、真子の分と一緒にして下さい」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!