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違う、色んなお客さんに言ってるんだ。私をからかってるだけ。
154センチと小柄な私。顔立ちは年相応だけど、子供扱いされることは少なくない。
「那月ちゃんって年いくつ?…あ、真子ちゃんの同僚だから同じか」
ほら、来た。
「25です。真子はひとつ上です」
「へぇ…」
「満島さんはおいくつなんですか?」
「俺?28」
「あ、兄と同い年ですね」
「ふーん、お兄さんいるんだ」
私ってば、プライベートな情報をペラペラと…。
「っ同じのもう一杯いただけますか?」
話を反らした感丸出し。
やっちゃった、と内心でこっそり後悔。
満島さんは私の心の中を知ってか知らずか、目を細めると「かしこまりました」とシェーカーを振り始めた。
「―はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
コクリ、と一口。
やっぱりおいしい。
「このお仕事、長いんですか?」
「んー…きっかけは大学入ってから始めたバイトだから、長いと言えば長いね」
「そうなんですか…」
相槌を打ちながら、グラスを傾ける。
不意に、顔がじんわりと熱くなってきた感覚に襲われた。
慣れない場所で、しかも初対面の人と二人きり。
おまけに決して得意ではないアルコール…と来れば、酔いも早くなるのだろうか。
少しずつ、そしてゆっくりと、残りのグラスの中身を口に含む。
「…満島さん、ごちそうさまでした。お会計、真子の分と一緒にして下さい」
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