もう一人の店員さん

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もう一人の店員さん

―日曜日。夕ごはんを済ませて部屋で寛いでいた時のこと。 (あれ?) 明日の予定を確認しようと、スケジュール帳を取り出したのだが、いつも鞄の中に入れていた小花柄のミニポーチが見当たらない。 中身は絆創膏と綿棒。 何かあった時の為のものだ。 金曜日、会社を出る時には確かにあった。 すなわち、バーに落としてきた可能性が高い。 気が進まないが、足を運ぶしかないようだ。 二度目の訪問はできれば避けたかったのに。 カランカラン 「いらっしゃいませ。どうぞ、お好きな席に」 カウンターから出てきて応対してくれたのは、スッと切れ長の瞳の、綺麗な顔をした男性。 満島さん程ではないが、十分背が高い。 「あの…たぶんこちらに忘れ物してしまったと思うんですけど、白地で細かい花柄のポーチってありませんでしたか?これくらいの…」 身ぶり手振りで大きさを示すと、「あぁ、そういえば」とバックルームからすぐに持ってきてくれた。 「ありがとうございます」 差し出されたのは、たしかに小花柄のミニポーチ。 ジッパーを開けて、中身も確認する。良かった、私のだ。 ほっと息をつくと、まじまじと顔を見られていることに気がついた。 思わず一歩後ずさる。 カランカラン その瞬間、誰かが入ってきたことを告げるドアベルが鳴った。
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