もう一人の店員さん

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「ただいま」 「お帰りなさい、オーナー」 「留守番ありがとな、って、あれ。那月ちゃん」 「…こんばんは」 帰るタイミングを失ってしまった。 ポーチがあったらすぐに帰ろう、とムシのいいことを考えていたせいだろうか。 なかなか現実は思い通りに事を運んでくれないようだ。 「那月ちゃん、こいつはバーテンダーの柏葉智紀」 勧められるままに、カウンター席に腰を下ろしていた。 「智紀、こちらは神田那月ちゃん。真子ちゃんの同僚さん」 「神田那月です」とぺこり、と頭を下げる。 「バーテンダーの柏葉智紀です」 真子のお気に入りはこの人か。 出会って十数分、印象はクールでミステリアスといったところ。 …難攻不落じゃない?真子。 何気なしに左耳に髪をかけると、目敏くもその箇所に気を留める満島さん。 「ピアスこの前と違うやつだね」 「えぇ」 会社にしていくのはあくまでも仕事用。派手すぎないよう、最低限のおしゃれをしているだけだ。極々シンプルなもの。 今日は少し大きめの石のものをつけている。 ガーネットが揺れる、アンティーク調のデザインのピアス。 「プレゼント?」 直球ど真ん中。 にわかに跳ね上がる心臓を抑えつつ、見つめ返すことしかできなかった。
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