122人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
仕事終わりのアルコール
「お疲れさま、お先にー」
いつものように同僚の早水真子に声を掛けた時だった。
「あれ、もう帰っちゃうの?那月」
「うん…」
特に急ぎの仕事もないし、今日できる分は済ませてしまっている。
「ね、飲み行かない?イケメンの店員さんがいるバーなんだけどさ。最近お気に入りなの」と、こそっと耳打ちをされた。
(飲み、ねぇ…ま、いっか)
頷くと、「五分で片付けるから待ってて」と真子のキーボードを打つスピードが速くなった。
「ここだよ」
駅前通りからは少し離れた、とあるビルの地下一階にそのお店はあった。
カランカラン
「こんばんはー」
「いらっしゃいませ…あ、真子ちゃん、と」
視線が私に向けられ、慌てて会釈をする。
「同僚の神田那月。連れてきちゃいました」
「神田です」
今度はペコリとお辞儀。
「いらっしゃいませ。オーナーの満島尊です」
どうぞ、と柔らかな笑顔(営業スマイルだろうか)でカウンターの席を勧められる。
180センチはあろう長身に精悍な顔立ち、ゆるくウェーブのついたヘアスタイル。なるほど、真子のお気に入りなわけだ。
「あ、私いつもので」
「かしこまりました。えーと、那月ちゃんは?」
「…できれば甘めで飲みやすいやつをお願いします」
「アルコール得意じゃない?」
「えぇ、あんまり…すみません」
最初のコメントを投稿しよう!