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それから僕たちは一緒に朝食を作って、一緒にお弁当を作って、一緒にお弁当を食べて、一緒に帰って、一緒に夕飯を作って食べて寝て。
とにかく何をするにも一緒だった。
僕は桜田くんを誘惑する気がすっかりなくなっていた。
でも桜田くんは僕といる間ずっと嬉しそうにしている。
犬だったらぶんぶんと尻尾を振ってそうだ。
なにもしてないのに、なんでこんなに嬉しそうなんだろう?
僕は終始首をひねっていた。
そんなこんなで桜田くんの家で生活する最後の夜、桜田くんはご飯を食べながらぽつぽつ話し始めた。
「俺の母さん、海外で暮らしてるって言ったけど、本当は男と住んでるんだ。だから前の旦那との子供の俺は邪魔なんだ。だからここに一人で住んでる。」
「ふーん。」
突然の身の上話に興味がなくて、僕は生返事をして味噌汁をすすった。
「お前んちは父子家庭だったよな?羨ましいよ。俺父さんの顔知らないから……。あっ、こんなこと言っちゃ駄目だよな!悪い、お前の気持ちも考えずに」
正直そういう気遣いが1番鬱陶しいんだけど。不愉快になった僕は自分の食器を台所へ持っていった。
「なあ、お前なんであんなことしてんの?」
「うん?」
カチャリと食器をシンクに置くと、桜田くんはそんなことを聞いてきた。
「あんなことって?」
「いや、だから、お前誰とでも寝るんだろ?」
「うん、それが?」
「だから!なんでそんなことするんだよ!お前嫌じゃねえのか!」
「全然」
食器を洗いながら僕は当然のように答えた。
「すると皆優しくしてくれるし、なんでも言うこと聞いてくれる。皆そういうことしたいんだよ。君のお母さんだってそうだよ。お母さんだって女なんだから君なんかより男とする方が好きに決まってるじゃん。僕のお父さんだって……」
「待てよ!!!」
桜田くんはダン!と机を殴ると僕を睨み付けた。
「何?本当のこと言われて怒った?」
「そうじゃねえ!お前自分の父親もって言ったろ!どういう意味だ!」
「それはね、僕とお父さんは寝てるからだよ」
流石にショックだったみたいで、桜田くんの顔から感情が消える。やっと胸がすっとした。
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