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物心がついた時からお母さんはいなかった。
大学病院に勤めているお父さんはとっても厳しくて、僕が100点以外のテストを見せるとずっと殴られた。
お父さんが怖くて友達も作らず、クラブにも入らず勉強に明け暮れた。
でも僕が12歳の時のお母さんの命日のことだった。
僕を見てお父さんが「みどり……」と呟いたのだ。
側にあった姿鏡を見ると、肩までかかったお母さんゆずりの色素の薄い緑色の髪の毛に、女の子みたいに細い手足、女の子にも男の子にも見える僕の顔は遺影のお母さんの写真と似てなくもなかった。
お父さんはお母さんの名前をうわ言のように呟きながらその場で僕を押し倒す。
お父さんのごつごつした手がぼくのカッターシャツの中に入ってくる。
今から何をされるかわからない年齢でもなかった。
でも僕にはどうでもいいことだった。
お父さんが殴らないでいてくれる。僕を見てくれる。
僕の薄い胸を這い回る舌と手の感触を感じていると、僕のひび割れた心が満たされる気がした。
3年前のあの日、処女を散らした僕にお父さんは初めて謝った。
嬉しかった。お父さんが僕をみてくれた。
僕が「大丈夫、怒ってないよ」と言うと、お父さんは驚いた。
「これからもしたくなったらいつでもしていいよ。僕待ってるから」
「い、いいのか?」
「うん、でも……」
次からはお母さんの名前は呼ばないで。
それだけは約束してもらった。
それから僕とお父さんの関係は続いていた。
お父さんは僕の名前を何度も呼んで、可愛い可愛いと言いながら僕を抱いた。
最初は体がきつかったけど、今ではちゃんと気持ちよくなれる。それにお父さんに可愛いって言われるのは嬉しかった。
お父さんは殴らなくなったし、僕に優しくなった。
僕は幸せだった。
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