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『君は、どこから来たんだい?』
別にどこでもいいだろ。
『じゃあ、聞き方をかえよう。なんでこんなところにいるんだい?』
……。
『ふむ。しかし私から見ると、君はまだ成人していない様に見えるんだけどねぇ。それなのに死に急ぐのはどうして?』
――お前には関係ないだろ。
『君がこの足跡を辿っているという事は、死にたいのかい?』
どうだろうな。
『そうかい。私はてっきり観光に来たのかと思ったよ。わざわざ握り飯で死にに来るなんてねぇ。まぁでも、それしか持って来ていないっていうのもおかしいとは思っていたんだけどねぇ』
――ぐうの根も出ない。
確かに、自殺志願者がお弁当持参で自殺しに来るなんて……そりゃあ「お間抜けさん」と言われても仕方がない。
しかし、親にはそういう言い訳をしないといけなかった。
なぜなら、俺はここ一年ほど『ひきこもり』で、そもそも外に出ていなかったからなのだ。
だから、そんな俺が「一年ぶりに外に出る」なんて言ったモノだから、母さんは張り切ってしまった。
俺を女手一つで育ててくれた……優しい母さん。
尾がひきこもりになっても「いつか出てきてくる」と信じてくれていた事を知っている。
だから、そんな母さんを見て、俺は「出来れば……余計な心配はかけたくない」という気持ちになり、思わず「一人旅しに行ってくる」なんて言ってしまったのだ。
多分、母さんは俺が「どういった目的で外に出るのか」という事も知らない。だから、俺を見送る時も母さんは終始笑顔だった……。
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