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「それにしても、あいつ戻って来たよな? たとえ一年留年する事になって……って、本当イライラするよなぁ」
「なぁ?せーっかく『そのまま辞める』にかけていたのになー」
その言葉に、黒猫は耳をピクンと動かした。
「ええ、可哀想だよ。そんな事言ったら」
「そうそう。これから頑張る『つもり』なんだから……ねぇ?」
女性たちもそう言って、何が面白いのか笑っている。
『……』
『おっ、おい。大丈夫か?』
今度は白猫が尋ねる番だった。
『え?』
『あっ、いや』
思わず言い淀んでしまうほど、黒猫は……怒りに震えていた。もちろん、ただの雰囲気ではあるが。
『まっ、まぁ? 私には関係のない事だし?』
我に返った黒猫はすぐにそう言って取り繕った。
『いや、こいつらにはそれ相応の罰を受けてもらわなければならぬ』
――そんな『低い声』が二匹の耳に届いた。
『!』
『!』
二匹は振り返ったが、そこには誰もいない。
『あやつらの所業によって、ここに来た人間は数知れず、この間の彼の様に思い止まったヤツもおるが、そのほとんどは……』
『でっ、でも。この足あとは、あなたが人間たちに今までの行いを振り返らせるために用意したモノ。最終的な決定権は、足あとを歩いた本人が決める。だから、あなたが気にやむ事は……』
『……いいえ。この方が言いたいのは、そもそもここに来る必要のない人まで来ていると言いたいのよ』
黒猫がそう言うと、声は『ああ』とだけ言った。
『だから、必要のない犠牲を生み出す諸悪の根元を絶たなければならない』
『……でも、いいのか?そんな事をして』
『彼らの生み出した犠牲は、彼ら四人全員を犠牲にしても全然足りない。それくらい、彼らは尊い人たちを犠牲にしたの』
『……そうか』
それだけ言うと、二匹は早速行動に移した。
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