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バレーボール部の美咲。
五千人に一人、人口のわずか0.02%しかいないはずの魔女が、なぜ同じクラスに二人もいるのだ。しかも二人は天敵同士。
「美咲、なんで……」
「こっちのセリフだよ」
睨み合い、お互いフンと鼻を鳴らして顔を背けた。
一年生の夏、体育館の壇上で舞台稽古をしていた理沙たち演劇部に、バレー部の先輩が「セリフを言う声がうざい」と言った。演劇部の先輩が、バレー部が発する「そーれ」という掛け声のほうがよほどうざいと言ったことから、二つの部に対立が生まれた。
コロナで卒業式が中止になり、先輩たちは仲直りするチャンスを失った。対立はそのまま理沙たちの代に受け継がれた。
美咲とは二年生で同じクラスになったが、自宅学習や分散登校で顔を合わせる機会は少なかった。美咲が理沙を悪く言っていると人づてに聞いて、敵意を隠すのをやめた。
「なんで、来たのよ」
「魔女だからに、決まってるでしょ」
「自分が魔女だなんて、よく信じられたね」
親から聞いても、理沙はマユツバだったのに。
「それに、箒は?」
「今どき箒なんて、家にないでしょ」
美咲は抱えていた大きな袋から丸い円盤型の掃除ロボットを引っ張り出した。
「まさか、それで飛ぶ気?」
「そうだけど?」
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