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お互いぶすっとしたまま「新月山バス停入口」の角まで来た。住宅街を通る脇道に入り、集合場所になっている麓の駐車場を目指す。
街の外れの古い一軒家の前で、理沙は足を止めた。
「木村さん、元気かな」
「誰?」
「ここの家のおばあちゃん。杖を突いてるけど、自分でバスに乗ってデイサービスに来てたんだ」
慰問で訪ねた「ひまわり園」で知り合った。去年、新作の取材で新月山に来た時、ばったり会って家に招いてもらったのだ。
ほうじ茶とお煎餅をご馳走になった。掃除の行き届いた古い家は、しわくちゃだけれど凛としている家主とよく似ていた。
「コロナで、デイサービスに来なくなっちゃったんだ。バスに乗ってたし、もし感染して、みんなにうつしたら怖いからって」
「ご家族はいるの?」
理沙は首を振った。
「一人暮らし。歩かないで、足腰が弱ってないかな」
十七歳だけではないのだ。
かけがえのない八十歳の一年も、コロナで奪われてしまった。
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