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駐車場には黒いコートにマスクをした女の人たちが集まっていた。みんな手に竹箒を持っている。
クリップボードを持った中年女性が直美と理沙に気づいて、近づいてきた。
「直美、お久しぶり」
「二十年ぶりね。葉子、ずっと続けててくれたのね」
葉子という女性は、今は「チーム新月山」のリーダーと「新月山魔女会」の代表を兼任していると言った。チーム新月山は選抜された魔女で構成される精鋭チームで、例年はチーム所属の魔女だけが大晦日に闇を掃くのだと直美が説明した。
直美が理沙を紹介すると、葉子は「お嬢さんも、魔女なの?」と驚いた。
「直美の娘なら、期待できそう。よろしくね」
感染予防のため握手はできない。
検温と手指の消毒を済ませて待機するよう言い残し、葉子は次の到着者のほうへ歩き出した。
「魔女って、普通は親子じゃないの?」
「血筋は多少あるけど、必ず遺伝するわけじゃないわね。二代続くほうが珍しいみたい」
祖母が魔女だとか、遠い親戚に魔女がいるとか、だいたいそんな感じらしい。気配を感じて、一番近しい魔女が迎えに行くのが一般的だと教えた。
どこで血がつながっているのかわからないほど遠い血筋に生まれることもある。そうなると本人や周囲の理解を得るのが一苦労だと言った。
実の親である直美に言われても、理沙も最初は信じられなかった。突然、おまえは魔女だと言われたら、それは困惑するだろう。
葉子が手を上げ、距離を空けて魔女たちが集合した。
「しばらく途切れたけど、今年は新しい魔女が、二人も十七歳を迎えました」
理沙のほかにもう一人いるらしい。
葉子の視線を追った理沙は、そこにいる人物を見て「げっ」と呻いて顔を歪めた。
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