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だけど。
だけど。
私は目をぎゅっと瞑り、首を横に振った。
「ううん。やめとく」
「え、なんで?」
私の返事に意外そうな表情をする丹羽くん。
「神様のご褒美は、願いごとが叶ったら使おうと思って」
丹羽くんに向かって微笑む私。
今の私の実力じゃあ、丹羽くんと一緒に目指す大学に合格できるかどうかまだわからない。今この綿棒を体験したら、きっと余韻に浸ってしばらく呆けてしまうだろう。それに、丹羽くんにもたぶん悪影響が出てしまう。
だから、この貴重な綿棒は、嬉しい気持ちの中で使いたい。
大学にふたりで合格して喜んでいる、丹羽くんの部屋で。
「結局さ、池田さんの願いごとって何なの?」
「え、さっきも言ったけど、叶えるまで秘密」
「なんかずっと気になってしまってさ。僕だけに教えてよ」
肩にそっと手を乗せられ、少しだけびくっとする。
丹羽くんが、真剣な表情で私を見ている。
そんな表情で聞かれたら。
「……○○大学に合格すること」
言ってしまった。
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