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昨日からやまなかった雨は未明には雪へとかわった。
午前中吹雪いていた空は昼と夜の間に今ではうっすらと雲が残るくらいになり、黒板のような夜空に浮かぶ満月が地面を照らしている。参道の両側に並ぶ柳の木は枝が真っ白となりすっかり雪化粧だ。
さくっさくっ。
雪の積もった道を、注意して歩く。久しぶりの積雪。雪に慣れていない九州人には、わずか数センチでも危険なのだ。
「大丈夫?」
「大丈夫」
細い目をさらに細めて笑う、丹羽くん。
サッカー部で足腰を鍛えているから、雪の道もへっちゃらみたいで、のろのろと歩く私につきあって遅く歩いてくれる。
丹羽くんは私のこと、どう思ってるんだろ。
大晦日の夜に雪乃神社へお参りにいかない、と終業式の日に誘ってくれた丹羽くん。
お互い大学受験を控え時間はそんなにないけれど、神様にお願いに行きたかったし、何より丹羽くんからの初めての誘いを断れるわけなかった。
いつもは私の方からお願いして、学校が終わったあと丹羽くんの家でふたりお互いの隠しごと──「趣味」を楽しんでいた。
無理に付き合ってもらってるのかも、と思うこともある。でも、「趣味」に昂じたあとの私を見て恍惚とした表情の丹羽くんを見ていると、丹羽くんも楽しんでくれているようには思う。
でも、「趣味」以外で、丹羽くんの方から誘ってくれるなんて。
地元福岡にあるのに、生まれて初めて行く雪乃神社が近づくにつれ、道を歩く人の数は多くなっていった。歩く雪の石畳は無数の足跡で灰色をのぞかせている。
景観に配慮してか参道の明かりは薄暗い。福岡の中心部だけど、ここなら星が見える気にもなってくる。
そういえば、今日は流星群が見えるって言ってたっけ。
流星がみえる大晦日ってやばくない、と秋月くんが黒板の前でしゃべっていた。今夜、雪乃神社の近くなら見えると分析していたけれど、本当かな。
参道はゆるやかな登り坂へとかわり、道をゆく人々の足もゆっくりとなる。
前を歩く大学生くらいのカップルが、しっかりと手をつないでいた。
対して、私たちは──。
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