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雪がシンシンと降っている。
北海道の釧路湿原はこの時期、冬化粧で白銀に輝く。
いつもなら静かで荘厳な地。
しかし、今年の冬は違った。
湿原には三十人程の警官が臨場しており、忙しなく動き回っている。
破られたのは、静寂だけではない。
スノーモービルや足あとで、雪原の至る所が醜く削れていた。
刑事達が捜査したからだ。
それらの痕跡は全て、道路から五キロ離れた小屋へと向かっている。
釧路署の刑事・宇垣は道路に立ち、雪原と小屋を見て、溜息を吐いた。息が凍って白くなる。
「宇梶警部、道警本部から応援の方が参りました」
制服警官が報告してくる。
「分かった。どこにいる?」
「ここにいるわ」
宇梶は飛び上がる程、驚いた。
真後ろで声がしたからだ。
「道警・捜査一課から来た安藤カスミよ。
よろしく、宇梶警部」
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