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「私からあげられる物は何もない。ただ知識は与えてあげられる。」
婆ちゃんは、私によくそう言った。そしてその後には決まって
「知識も立派な財産だよ?盗まれる事も無いしね。」
と茶目っ気たっぷりに言うのだった。
私は今日も祖母からの教えを胸にリングに向かう。
「行ってくるね、婆ちゃん!」
いつものように婆ちゃんの写真に声をかけて家を出る。写真には肩からチャンピオンベルトをかけた若き日の婆ちゃんが満面の笑顔を見せていた。
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