第五話

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 ふと後ろに誰かがいる気配に頭を隠した。 「元に戻ったってか?」  デスク…、誰に聞いたんですか? 「千晶ちゃんから連絡あったぞ、それと病院へ行けってな」  病院、ああそうだ薬。 「完全復活ではないのでよろしくお願いします」 「ウソついてもわかるんだからな」 「マジで、憶えてないこともあるんですってばー」 「そうだな、俺にケンカ吹っかけてこないってことはそうなんだろう」  本当だ、雨が降る、なんて周りにいたやつが言った。先輩記者に嫁のことを話すと、真矢が向こうへ行ったのは俺ができると判断されたからだろうがと言われた、うれしかった。  病院か、その足でがんちゃんに聞いて会いに行くのも手かもな。  病院へひとりで行けた。 「俺の事思い出した?」 「はいすみません、杉典久〈のりひさ〉先生」 「よかった、思い出してもらえて」 「あの、でもまだところどころかけてるんです」  そうだと思う、焦らないで、生活には支障が無いのだから、ゆっくりすればいいといわれた。頭を抜糸しましょうと言われた。 「縫ったんですか?」 「縫いましたよ五針」 「知らなかった」 「痛みはありますか?」  痛いよりむず痒い、たまに脳天まで突き刺す痛みがあるから痛み止めいただけますか? 「睡眠薬は」 「それはいいです、あ、そうだ、先生、ちょっとこれ見てもらえますか?」  俺は坂崎の薬入れと中に入っていたクスリ、それと調べてもらった薬の入れ物を見せた。  この袋に書いてあるものと、中身、あってますか?  写真を見る、あっているという、それなら、この空いた物はこの薬か? 「そうだな、これだと思う、これどうしたんだ?」  ちょっと知りあいから調べてほしいと預かったのだと言った。 「睡眠薬もいろいろあってな、これはきつい方だな、君のは服用してから、二、三時間たたないと眠くならないが、こっちは即効性があるな、相当眠れないのか、危険だから少ししか出さないんだけど、こんな数だして、病院にあんまりいけない人なのかな?」  御礼を言った。又、飯でもと言ったら笑われた。 即効性か、今は痛み止めと胃薬ぐらいと笑って言っていたそうだが。ふむ。もっと突っ込んで聞いてみるか? 数が減っている、使ったのかもしれないが、もしも他人が使ったら?俺はそっちが気になった。
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