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病院へ行く。
私を覚えてますか?と聞かれたが、この人誰だったかな?
目の前にいる病院の先生、誰?
「今日は何月何日ですか?」
「さっき聞きました、九月、二十八です」
「昨日の事は覚えてないんですね?」
「・・・はい」
「起きた時はなんじでした?」
何時?エーと時計を見たら18時でした。
「その前は覚えていますか?」
その前?まえってなんだ?
「傷はどうしてできたのか覚えてますか?」
首を振った。
「千晶、帰ってきてすぐだったのか?」
呼び捨て?誰?
「うん、眠いってすぐ横になっちゃって、だから頭の傷もさっき知った」
「ではもっとさかのぼりましょう、今は秋です、わかりますか?」
なんとなく――、長そでで、そんなに寒くない。?
「そうですね、では、夏の事は覚えてますか?」
「夏、なんだったかな?」
「晃、匂い、憶えてねーか?」
横から顔を出した杉社長。
匂い?
くさかっただろ?と顔がイヤーな顔で言う社長。
んー、嗅いだらわかるのかな?
三人が顔を合わせ悩んでる?
「では春です」
春ねー。んー。
「これは覚えてない?」
携帯の待ち受けを見せてもらった。
「あ、翁長、これは?たまごは?」
「孵ったわ、のんちゃん、私達が出会ったころにまで戻ったみたい」
「それじゃあ、ここ一年ぐらいが欠けたのか、でも一時的なものかもしれないから、様子を見ましょう、仕事は覚えてらっしゃるんですよね?」
「仕事ですか?新聞記者をしています」
カメラマンだというのはわかっているみたいなんだけどと千晶は言う。
「レントゲン、MR、CTも異常はないしな、血液検査も正常です、生活に支障がなければ、もう少し、様子を見ましょう。頭は痛いようですし、擦り傷もありますので、痛み止めは出しておきます、後眠れないかもしれないので睡眠薬を三錠だけ出しますね」
「ありがとうございます」
俺だけ廊下に出た、中では何か話しているのか、イスにどっかと座り込んだ。
俺、結婚したんだへへへ。
指輪をくるくる、にやけてるだろうな。
「それじゃ何かあったら電話して」
「ありがと」
「すまなかったな」
俺は立ち上がった。
最後にダメ押し、「俺覚えてない?」と先生に言われた。
んー?誰だろう?
「だめか、一緒に北海道行ったのにな?」
一緒に?この人誰?と社長に助けを求めた。
「俺の弟」
すみませんと謝ることしかできなかった。まあ気長に治そうと言われた。
私の少しお腹が大きくなり始めたのと、気づかれもあって疲れて帰ってきた北海道旅行。
彼は私の後ろを支えるようにして階段を上っていた。
ちょっと立ち止まって、腰を伸ばした。その時、後ろにいた彼がバランスを崩し、階段から落ちた。そんなに高くない所だったからか自力で部屋に戻ったのに。まあ、ゴンというものすごい音がしたのは確かだけど…。
眠るまでは、私の問いにもうん、うんと返事をしていた。でもまっすぐベッドに行くと眠った彼。私も疲れていて一緒に寝た。のんちゃん先生にはそう説明してある。
頭には大きなガーゼとそれを抑えるネットが帽子のようだ。帰ってきて枕が真っ赤になっていてびっくりしたけど、たいしたことなくてよかった。
「それで?」
「それでって、そこまでは何とか…」
過去のことを聞いています、どこまで覚えているやら。
「お母さんが埋まってた場所とかはあってるし、じゃあ、そのあとか」
「なあ、俺、ほんとに結婚したのか?」
『これわかる?』
私のおなかを触らせた。
こわごわお腹をなでている。
「う、うん」
「なに?」
「赤ちゃん」
「そう、これは、あなたの子」
「そうなんだー」
「そうなんだじゃないよ、大丈夫かよ」
はは、ははは、はーあ、どうにかなるべさ。
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