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第二話
次の日、編集長と部長に呼ばれた。
「本当に覚えてないのか?」
千晶に何か預かってこなかったかと言われ、そういえば朝封筒を預かったような、持ってきていますと言ってカバンから出して差し出した。
診断書「本当ですね、晃お前どこまで覚えてる?」
「千晶のお母さんの葬式のあたりまでは覚えてるんですけど、その北海道にいって来たっていうのを覚えてなくて」
「まあそのくらいなら、何とかなるだろ、仕事は、頑張ってくれよな、パパさん」
部長に言われた、照れるな。
今抱えている仕事、それに伴うのは変わりの人にしてもらうと言われた。それは仕方がない。
編集長は部長にこれはどうします?なんて聞いているけど、俺はそれを黙ったまま聞いているしかなくて…。
「頭に傷もあるんだ、俺にたたかれねえように防御しろよ」
「うす」
「じゃあ仕事に戻れ」
「はい、お願いします」
二人を残して俺は会議室を出た。
「先輩、ほんとに記憶喪失?」
「んーさっぱりなんだよな、千晶と付き合いだしたとこから昨日までがぽっかり」
「また頭を打てば」
「それはやめて、まだ傷が痛いの」
「はー、少しはおとなしくしていてくださいよ」
おとなしくってどういうこと?
え?
え?ってなんだよ?
まあ、電話もらって一人で飛び出していくなんてことしないでくださいと真崎に言われてしまった。
「はーい」
「頭打って馬鹿になったか」
そう言って肩を叩かれたのは、カメラマン先輩の新藤さん。
「お疲れっす、あのー、真矢は?」
そこまで忘れたかという先輩、真矢は俺より一つ上だが同期、カメラの腕はぴか一で俺よりはるかにいいものを撮っていた。
目の前に並んでいる茶封筒を取ると、名古屋に転勤した、置き土産大事にしろと、それで頭を叩かれた。
そっか、転勤したのか…。
顔もいいし女にもてるし、いつも俺の前を行ってたのが消えた。
ぽけーっとして目の前の写真を見始めた。
それでも仕事は入ってくる。
「真崎」
「はい」
「晃連れて、これ行ってきてくれ」
「俺が助手?」
「あたりまえだ、頼んだぞ」
「いきましょう」
「はい、はい」
「カメラ持ちました?」
「あ多忙よ」
「それじゃあ行ってきます。大丈夫すか?」
「何とかなるだろ」
ポケットには痛み止めを忍ばせた。
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