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狭い通路、関係者が通る道のようだ。
「何回言ったらわかるんだ!」
「うっせーな、ちゃんとしてるだろう」
お、チャンス!
大きな声に振りかえった、球団関係者に怒られるターゲット
「すんませんでした」
捨て台詞、いやいや、ふくれっ面いいねー
目が合った。
「すみません、週刊ビッグです、女性関係のことがうわさされていますが」
「うぜー、知らねー」
「へー、そうか、うわさは知ってんだ、一枚撮らせてくれよ」
俺の方に向かってくる。
「先輩!」
「晃さん」とがんちゃんの声もした。
「あおってもなんも出ねーよ」
ぎろりとにらんで通り過ぎようとする。
「いいね、なんか隠してる時は、人間しゃべるんだ、いらないことでもね」
くそー、と言ったのが聞こえた。
「殴るか?その腕で」
ブンと長い腕が戻って来て首元を掴まれた。
俺を見て、頭のネットが見えたんだろう「ちっ!」といって押された。
「なんでもないなら堂々としろ、だから投球に出るんじゃねえのか?」
「は、あんたらが言う?」
「じゃあ、低迷してるの、何かあるのか?」
また、首元を掴まれた手に力が入る。
「ちょっ、ちょっ」
「がんちゃん止めるな」にらむやつを俺もにらんだ。
「坂崎さん、俺、こういう仕事してるんです、何かあったら相談してください」
がんちゃんが、名刺を目の前に出した。
「便利屋?」
「ああ、困りごとから、恋愛、自分の道の引き際までなんでも世話してくれるぞ」
「なんで、あんた知ってるんだ?」
「俺の嫁の実家だ」
「へーあんた、嫁さんいるんだ?」
上から下まで見られる。手が離されくすっと笑われた。
「悪かったな」
「フーン、まあいい、好きにすればいいさ」
名刺をとると俺の胸を軽く押した。
つかつかとスパイクの音が響く廊下を俺達は見ていた。
「晃さん、戻ったんじゃ?」
「へ、なんで?」
「さっき言ったこと?」
「何言った?」
「はあ?覚えてないんすか?」
困りごとなら、恋愛から、自分の道の引き際まで世話してくれるって……?
「おかしなこと言った?」
「いえ、正しかったです」
「うん、まあな」
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