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この親父の遺影は、伯父さんに会えて、喜んだ表情を見せてるんですよ。
いいえ、冗談じゃありません。
親が亡くなるっていうと、葬儀屋を呼んだり、檀家のお寺に連絡したり、知り合いにも一報しなけりゃならないしと、いろんなことをたてつづけに準備しなけりゃならないんですが、その中でひとつ、意外なことに、最優先で必要になるのが、遺影に使う本人の写真なんです。
葬儀屋からせっつかれて、しかたなく社長室やら親父の書斎やらでデスクの中をひっくり返していたら、茶色い段ボールの箱を見つけまして。
ネット通販で何か買っていたんだろう、と思いながら開けてみたら、今、祭壇の上にある、あの遺影の額が入っていたんです。
額縁の裏にタブレットがはめこまれていて、その黒い画面に、親父の殴り書きの文字で、「ワシが死んだら電源を入れろ」ってメモが貼ってあって……。
で、タブレットの電源を入れたら、あの遺影が画面に現れてきて、いや、驚いたのなんのって。
と思ったら、サービス説明のホームページが画面の横に出てきましてね。
読んでみると、月額料金で使えるサブスクサービスというやつで、ネット……クラウドでもって、親父の顔を合成して映像にするっていうんですよ。
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