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●音を重ねる、和音
もう一度、お正月の楽譜を出してみます。
楽譜が読めなくても、お正月の歌は思い出せるし歌えますよね。或いは好きな楽器で上の通りに弾くことも出来たと思います。
でも、このままだとーー
ーー何だか寂しくないですか?
音が少ないというか、こう……土台がない感じ。飾り付けもなければ支えもない、非常に心もとない感じ。
メロディーだけだと、そんな印象を持った方も居たと思います。
そういう時、僕らは解決方法を一つ知っています。皆で歌えばいい。
同じメロディーを合唱すれば、音の厚みも増えて何だかいい感じ。でも、やっぱり物足りない。
ここに来て初めて、僕たちは「違う高さの音を重ねる」ということを始めます。ハモる、ってやつですね。
ハモり方にも色々あります。メロディーより高い音、低い音。メロディーとハモりの音の高さの差。時には、どうしても上手くハモれない音の並びも出てきます。
このハモりのこと、音楽では和声といいます。メインのメロディーに絡ませるようなメロディを作るので、当然装飾というか、隠し味のようなイメージが付いてくる。
そして、これでも物足りないという時。次はいよいよ『調味料』の出番になります。
それこそが和音。ハモるメロディーを三つも四つも重ねたようなイメージです。
例えば、オーソドックスな味付けの和音、つまり伴奏を付けるとこうなります。
何かよく見る形になってきましたよね。ここで付けたのは、すべて『三和音』と呼ばれる基本の和音だけです。それでも、よく音楽の授業で聴くような、割とクラシック寄りの響きになりました。ポトフのスープとでも言いましょうか、あっさりした味付けです。
ここからは、本当に好きなように調味料の抜き足しをしていきます。和音のバージョンを上げて『四和音』、また特定の進行を使っていけば複雑な味わいのジャズに、またリズムや特別な和音を加えていけばポップスにもテクノにもロックにもなっていきます。
さらに、音楽理論ではカバーしきれない、音の混ぜ方(ミックス)や音の処理(リバーブなどの加工)なども全体にコクを出してくれます。
そうして、ともかく自分好みの味付けをし終えたら、先に口ずさんだ簡素なメロディーはあら不思議。様々な彩を添えられて、目の前のテーブルの上にずらりと並べられているのです。
音は食材で、音楽理論はレシピ。どんな食材を選びどう味付けするかもあなた好みだけど、好きに作ってる時に迷ったとき、或いは他のジャンルの料理を研究したいときに見るのが、このレシピの意味なわけです。
というわけで、これからの音楽理論解説では、音楽をこうして形作る色んな要素を詳しく分析してみて、『こういう材料・スパイスがある』『これはこいつと相性がいい、悪い』というのを少しずつ名前を付けながら見つけていくことになります。
別に読まなくても音楽は楽しめる。けれど、複雑な味わいを楽しみたくなったり、その作り方を知りたくなったりしたら……
……良ければその時は、皆で一緒にこのレシピ本を眺めていきましょう。
本当の本当に初級編なので、進め方がアレだったかなと思いますが……音楽は別に難しい素材で出来ている訳じゃないというのは伝えられてれば、いいな?
それでは今夜はここまで。今度は理論の一番最初、『音の名前』について説明しまーす。
第一回目、お付き合いいただきありがとうございました!
2021年 1/7 了
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