三、クリークヴァルトへ

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   翌日、船の上と同じように、姫のもとに現れた霞の後ろに立っていたのが、この男、ドリューだ。  驚いた墨をみた得意げな顔が忌々しくも蘇ってきた。 「船を降りたのは知っていたが、一緒になるとは思っていなかった」 「オレもだ。別の船舶会社にでもやとってもらおうと思っていた時に、霞の父に声をかけられた。霞の護衛にってな」 「……確かに、護衛には向いてそうだ、力が強い」 「船で働いてれば、力はつくからな!」  カラッとしたドリューの笑顔に、墨はため息をつく。 「ずっと船なのか?」 「おう。十四で働きに出た。それからずっと船の上だ」 「想像できないな」 「オレはお前の生活の方が、想像できないんだがな。四六時中姫様のそばか?」 「当然だ」 「今は男の格好なんだな」  海を眺めていた墨は、自分の服を見下ろし、そしてドリューの方を見た。  姫奴の墨染の衣に、それが姫奴の正装だ。  男女の違いはなく、すべて揃い。上着と裤子の上下。 「別にこの服は男の服ってわけじゃない」 「そうなのか?」 「これが天籟族の普段の服だ。男女の差異はほどんとない」 「でも、姫さまのドレスみたいなのと、お前がこの間船で来ていた服は全然違うじゃないか」 「あれは大清の服だ」 「タイシン?」  ドリューの顔に大きな疑問符が浮かんでいる。  首をかしげて不思議そうに尋ね返される。 「チャイナ」 「おー、チャイナ! オレの地元の男爵さまも、チャイナをたくさん持ってる」
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