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ドリューは目を輝かせながら、小さな写真を両手で捧げ持って、上下左右、角度を変えて何度も見る。
「きれいだなぁ、姫さま。これが正装か? 見たことがないな、冠も、何かこう鳥がバサァって翼を広げたみたいだ」
「もっと賢そうなことが言えないのか」
ふん、と鼻で笑いながらも、まんざらでもなかった。
正装の姫は最もうつくしい。
極上の天籟更紗の旗袍に、金糸銀糸で縫い取りをした大衿と帯。
歩くたびに涼やかな音を立てる金細工の冠。
そんな衣装は飾りに過ぎない。
姫は、墨の姫はうつくしい。
秋空のように透き通った目や、初雪のような肌。この世界で一番清らかなもので出来ている。
「この冠は、天籟国に置いてきた」
「なんで?」
「神聖なものだから」
冠は祠堂に残してある。
姫たちがそれぞれ継ぐものだからだ。
兄たちの娘が祠堂に入り、あの冠を受け継ぐ。
天籟国はこれからも脈々と続く。
それが、国だ。そして、それを支えるのが、姫奴だ。
墨はドリューから写真を取り返すと、守り袋にそっとしまい込んだ。
「ムオ殿、ドリュー」
朝賀が声をかけてくる。
「もうすぐ記者が来ます。用意を」
「……え?」
ぎょっとした墨に、朝賀は当然と言った様子で言葉を続ける。
「お召列車のサロンにいる姫の写真を撮る。クリークヴァルト公国の写真家も来ています」
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